お知らせ
2022/03/27 12:00
「CoffeeRoastVivace(コーヒーローストビバーチェ)」代表の前田崇之です。今日は「自分好みの味に抽出するコーヒーの淹れ方」をご紹介します。 【CoffeeRoastVivaceでハンドドリップに使用する器具達】 コーヒーを抽出する方法は本当に様々。コーヒーメーカーやエスプレッソメーカー、ハンドドリップするにしても「ネル」「ステンレスフィルター」「ペーパードリップ」。フレンチプレス、サイフォン、パーコレーター……この奥深さが楽しさでもありつつ、これからコーヒーに触れ合っていきたいと思う方にとっては「む、難しそう…」と抵抗感を感じてしまうこともあると思います。 その中で、CoffeeRoastVivaceが抽出に使用している方法は「紙のペーパーフィルターを使ったハンドドリップ」です。器具も比較的安価で手に入りますし、実は味わいの出し方がとても幅広くできるのです。場合によって「円錐型」「台形型」を使い分けますが、今回はビギナーでも落ち着いた味わいを出しやすい「台形型」を使ってご紹介します。 【コーヒーの味わいに関する参考表】 まず、自分好みのコーヒーを淹れるためには、自分好みの味を知ることが重要です。 「フルーティーな味が好き」 「すっぱいのは嫌だけど苦くなくてやわらかい味がいい」 「しっかりコクと苦みがある、パンチの効いたコーヒーが好き」 とは言ったものの、何をどうすればそのような味ができるのか…それが抽出の工夫で好みの味に近づけることができるというポイントです。 まずは初級編。 ・フルーティーな味:酸味があって、コクは少なく(すっきりとした味)、苦みはない ⇒浅煎り(ライト~ミディアム)のコーヒー豆に最適 ・やわらかい味:酸味はなく、コクはあって、苦みはない ⇒マイルド~やや深煎り(ミディアム~ハイ)のコーヒー豆に最適 ・コクと苦み:酸味はなく、コクがあって、苦みもある ⇒中深煎り~フレンチ(シティ~フレンチ)のコーヒー豆に最適 上記の通り、まずはコーヒー豆を入手しましょう。 ※本来は、豆の特徴や焙煎の度合いによって無数に組合わせがあるのですが、今は一旦割愛して、初級編としてお話しします。 ここから、「9個」のポイントに気を付けて、抽出していきます。 【フィルターに熱湯を流している様子】 ■Point.1:フィルターは熱湯で洗おう 紙のペーパーフィルターを使用する際、是非やっていただきたいのがこの作業。ペーパーフィルターについている「糊(ノリ)」の味は、実はコーヒーにとって天敵。なるべく熱いお湯をフィルター全体に流すことで、コーヒーの味わいを邪魔しなくなります。 ■Point.2:粉の粗さに注意しよう ここで、上の表にもある「粉の細かさ」を見てみましょう。 粉は細かいほど「酸味:強い」「コク:強い」「苦み:強い」になりやすく、粗いほど「酸味:弱い」「コク:弱い」「苦み:弱い」になりやすいです。つまり、細かいほど味わいが濃ゆく、粗いほどさっぱり軽い仕上がりになるということ。ご自身の味の好みが、「濃ゆい方が好きか」「さっぱりしているのが好きか」によって、粉の細かさを調整します。また、お店で挽いてもらうときは「ハンドドリップ用は何挽きですか?」というと「挽目(数字)」を教えてくれるので、是非聞いてみましょう。 【抽出量毎のおすすめ豆量】 ■Point.3:抽出する量によって粉の量(g:グラム)を変えよう 突然ですが、コーヒーメジャー1杯分は大体8~10gになっています。しかし、実は豆は焙煎加減によって「大きさ」「重さ」が変わるので、コーヒーメジャーに依存すると思わぬ味わいになってしまうことも。そこで当店でおすすめなのが、グラムで測ることです。 「1杯:130cc」と考えて「1杯分:12g」「2杯分:20g」「3杯分:28g」「4杯分:36g」が目安。一度に抽出する量が増えるほど、粉の増やし方を少なく加減していくところがポイントです。 【ドリッパー内の粉の密度を調整している様子】 ■Point.4:ドリッパーを「トントン」して密度を調整 ここで改めて、上記の表を見てみましょう。あまり注目されないのですが、粉の密度も味わいに大きく作用します。 密度が高いほど「酸味:強い」「コク:強い」「苦み:強い」になりやすく、低いほど「酸味:弱い」「コク:弱い」「苦み:弱い」になりやすいです。つまり、密度が高いほど味わいが濃ゆく、低いほどさっぱり軽い仕上がりになるということ。 フルーツ感や甘さを軽やかに楽しみたい場合、さっぱりと抽出すると特徴を楽しみやすいので、トントンせずに「ドリッパーを揺らして表面を均(なら)すだけ」にするのもおすすめ。逆に、しっかりと苦みとコクを楽しみたい場合は「5トントン」くらいが目安。 粉の細かさと同様に、どのくらいの密度がちょうどよいかを探してみると面白いです。 ※力を入れすぎると粉が飛んでいくのでお気を付けください。 【安定的な味わいを出しやすいのは88~90℃】 ■Point.5:お湯の温度で味わいが変わる またまた上記の表を見ていただく通り、お湯の温度でも味わいは変わります。 温度が高いほど「酸味:強い」「コク:強い」「苦み:強い」になりやすく、低いほど「酸味:弱い」「コク:弱い」「苦み:弱い」になりやすいです。 ただ、ご注意いただきたいのは「熱すぎるお湯では、ヤケドしたようなエグミがでやすい」ということ。どんなに高い温度でも92℃くらいに抑えることをおすすめします。 【蒸らしは中央からそっと円を描くように、フチまでしっかりと】 ■Point.6:蒸らしでの「注ぎすぎ」に注意 次はついに、粉を抽出に適した湿度にする「蒸らし」の工程。 先ほど調整した温度のお湯で、真ん中からそっと円を描くように、フチまでお湯を注いでいきます。 ここで気を付けたいのは「注ぎすぎない」ということ。蒸らしは、コーヒーのエキスがちょうどよく染み出るように、粉のコンディションを整える工程です。ここでお湯を注ぎすぎると、旨味よりも雑味が出やすくなったり、意図せず薄くなってしまったり。 注ぎすぎかどうかの目安は、蒸らしが終わった後の「サーバーに残ったドリップ量」で見てみるといいでしょう。下の写真は「2杯分(260cc)を抽出するための粉(20g)」を蒸らした後の様子です。コーヒーの琥珀色がうっすらと色づいているくらいが目安になるかもしれませんね。 【蒸らし後にサーバーに残るドリップ量の目安】 ■Point.7:注ぐお湯の「線の細さ」こそ命 実は私的に最も重要視しているのが、この「お湯の線の細さ」と言っても過言ではありません。なぜか。それは、静かにドリッパーをお湯で満たし「粉を躍らせすぎない」ことが、クリアで豆の特徴をしっかりと出してくれるポイントだと感じているからです。豆がアロマを出して、膨らんだり盛り上がったりすることはありますが、それは豆自身の力によるもの。お湯を注ぐ力で豆を躍らせてしまうと、エグミや雑味が出やすいように感じています。 目安としては、「まっすぐに線が落ちているか」ということ。写真のように、斜めにお湯が出ている状況では勢いが強すぎる可能性があります。なるべく優しくお湯をおとしていくこと(実はのの字も描きません)、それが私にとって重要なポイントです。 【垂直にお湯が落ちる程度に細ければGood】 ■Point.8:ドリッパー内の湯量で濃さを調整 これまでの「Point」を実行していくと、かなり自分好みの味わいに近づいていきます。ここで重要なのは、ドリッパー内の湯量です。まずは、粉全体をたっぷりと湿らせながら「粉のフチの水嵩(みずかさ)」を上げ下げしないようにキープすること。これができると格段に味わいが安定します。そして更に、コクを深めたい場合にはフチを「下げ目」に、更にクリアですっきりと特徴を引き出したい場合にはフチを「上げ目」に、滞りなく注ぎ続けていくことが重要です。 このドリッパーの湯量をコントロールできるようになると、もし他でうまくいかなかったPointがあっても、だいぶリカバリーできるようになります。 【フチの水嵩(みずかさ)を上げずに注ぎ続けている様子】 ■Point.9:ドリッパーを外すときまで注ぎ続ける ハンドドリップでの抽出もあと少し。最後は「ドリッパーを外すまで注ぎ続ける」ということです。 「Point.7」でもお話しした通り、ドリッパーの中で「豆を躍らせすぎない」ことが大切だと考えています。それに通じることですが、ドリッパー内の水嵩(みずかさ)が下がってしまうことで、ドリッパーの中身は形を崩し、意図しないエグミや雑味を出してしまいがち。 最後まで豆自体のアロマと旨味をしっかりと出してあげるために、ドリッパーを外す間際まで、ドリッパー内の形が変わらないように注ぎ続けてあげるのもポイントです。 【ギリギリまで注いでいたドリッパーを外した様子】 普段、店頭で抽出するコーヒーには、このような工夫が隠されていました。長文にはなっていますが、それぞれのポイントを気を付けてみると、すぐにできる工夫点でもあります。よりコーヒーを楽しむために、ご自身の抽出方法で悩んでいる方にとって、少しでもヒントとしてお力になれれば幸いです。